丸の内のオフィスで日々の激務に励むOLのA子。
「あーー○○ムカつく!ホントにムカつく!マジムカつく。うぅぅぅもう辞めたいぃぃ」
今日もくたくたになって独り暮らしのマンションに帰宅し、熱いシャワーを浴びて冷たいビール片手にソファにどっかと腰を下ろす。そしてTVでお気に入りの芸人を観て一笑い。ふと窓際で育てている観葉植物に目をやりながら、
「あぁ、やっと明日はお休み。この解放感。やっぱり家が最高!いやされるー」
A子は疲れた体をソファによこたえ、やがてうとうとと眠りに落ちていくのだった。
と、いきなり三文小説風に始まりましたが、現在読書中(遅々として進まない)の「GoWild」でまた思う所があったので今回も思いのたけを綴りたいと思います。
帰宅して一見ストレスから解放されているように見えるA子ですが、本当にそうなのでしょうか?
まあ全く「されていない」ことはないとは思いますが、これはある種のトリックで、もしかすると「激務」との対比効果でそう感じているだけかもしれません。
以前にも紹介しましたが、「人は20万年前から基本的にはそう変わっていない」ということ。
それを加味するとこのシチュエーションで人はどの程度癒しを享受できているのでしょうか?
はるか昔人間は、老若男女の集団でたき火を囲み、そこで周囲の捕食動物の存在に気を遣いながら今日の出来事をそれぞれに語り、火の番を交代しつつ眠りについていました。
はぜ続けるたき火の音や見知った人の囁き声を子守唄に、そして周囲の自然環境をゆりかごにして安心を得ていたのです。
人にとってそれらの音が心地よく感じるのは現代においても変わらず、某YoutTubeでは「癒し」や「睡眠」などを促す動画として1つのジャンルを築いているほどです。
ではなぜそれらが心地よく人に癒しをもたらすのかというと、それはひとえに「今自分は捕食動物から守られている」という安心感からです。
燃え続ける火、信頼できる人々の穏やかな様、いつもと変わらない風の音や虫の声、これらは全て「今自分は安全な状況にいる」ということを示してくれるものなのです。
なので現代において、気の置けない仲間と一緒にキャンプをするというのも、このような状況を懐かしんでの疑似体験なのかな?と思います。
エステやマッサージなども同様ではないでしょうか。
(雰囲気のある)安全な場所で(信用すると仮定した)人にされている「ある種の守られている感」が癒しの根源だと思います。
こう考えると、A子は観葉植物やTV、そしてコンクリートの密閉空間によって「自然や集団に属し、危険から守られている感」を現代風に演出しようとしています。それも全て無意識のうちに。
人の生活様式はすっかり変わってしまっても、やっぱり「怖れ」や「安心」の本能的な部分はまだまだ「大昔のまま」のようです。
A子は昼の激務で大変なストレスを受けているようです。人間関係や業務関係、その他さまざまな要因があるのでしょう。
ヒヒを対象にしたあるストレス実験が行われました。
動物にとって大きなストレッサ―(ストレスを与えるもの)とは何か?
当然、前述したように捕食動物に対する恐怖や危機感だと思いますが、結果は違っていました。
ヒヒは集団のリーダーから受ける様々な威嚇や恫喝などの嫌がらせに対し、最も高いストレス数値を示したのです。
実に不思議で面白い結果ですね。
集団行動をする人間などの社会性動物にとって「やられる!食べられる!」という命の危険よりも、身内の長の振る舞いの方にストレスを感じるというのです。
はたして、A子は昼に受けるストレスと夜に受ける疑似的な癒しのバランスはとれているのでしょうか?
大丈夫かA子!負けるなA子!
現代社会において昼のストレスは増える一方で、夜の癒しは減っていくばかり、今後のA子が心配です。
このような状況を鑑み、世界のリーダー的な企業、例えばGoogleとかAppleとかでは様々(昼寝や就業中の運動が自由だとか)な試みがなされているようです。
まあこれもこのほうが利益を上げられる(業務効率↑)と判断した結果であって、必ずしも人道的側面を最優先にした訳ではありません。その方が結果的に儲かる(イメージ効果含め)からです。
なので個人は個人で色々考えないとダメです。
世の中はまず効率最優先で変化します。(コアラのDNAと同じですね)
どうしても目に見えにくい心的或いは本能的要素は後回し。
待っているだけでは多くの犠牲者のうちの一人になる事は請け合いです。
現代人も一皮むけば20万年前の原始人と同じ。金髪碧眼が出てきたのがようやく1万年前。人類はまだこの程度の変化しかしていないのです。
自分の心に耳を傾け(なぜこれが好きなのか?嫌いなのか?楽なのか?辛いのか?)、色々考えてみましょう。
それでは!
ちなみに今回の参考文献は今読書中の
「GO WILD 野生の体を取り戻せ!」
ジョンJ.レイティ (著), リチャード・マニング (著)
です。
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